「ベトナムは、懐かしい」
と司馬氏が巻末で言っていたことがシンガポール滞在の1日目に思ったことであった。
そう言えば、「私の言葉は自分の言葉ではなく、都合のよい時に他人の言葉を引用する。」などと従業員から指摘を受けることがある。それには、とある理由がある。私が大学1年次の政治のゼミの苦い思いからである。そのゼミで私は、
「資本主義の発展形が社会主義である」
のようなことを言い、助教授や出席者から総スカンを受けた。そもそもそれは、高校時代の先生がそんなことを言っていたので、反証も無く苦し紛れに言ってみたのだが、そういえば、出身高校もその先生も完全に左系だった。よくも悪くも私の卒業した高校での経験は、部活動や友人との付き合いも含め、今の私のキャラクターに影響を与えている。
以来、引用の際にはできるだけ出自を明らかにし、自分で経験することを、本で得た知識などにあてはめるようにしている。「さも自分の言葉のように・・」というのは、今後もできないだろう。そもそも、100%オリジナルなどはこの世に存在しない。どこかで知識を得、影響を受け、自分で化学反応を起こす結果である。割合は問題ではない。それだけで十分オリジナルではないか。言葉を当てはめることで自分に納得がいき、次に活かすことができる。
なおまた、私は特定の政治主義者では無く、現実的・合理的主義で、たまに強烈に楽観的、強烈に悲観的で、一言多く、少なく、楽しいことが好きで、合わないと思うことに、合わせることもしない自分勝手な人間だ。よく人を雇って会社をやっているな、とときどき思う。
話しがそれてしまった。サイゴン-シンガポールは2時間あまりのフライトで着く。大阪-札幌の距離ぐらいなのに、タイムスリップしたような感覚だった。ハブ空港として名高いチャンギ空港のMRTから移動するときなど、「銀河鉄道999のようだ・・」と思った。
そしてMRTに乗ってやったことは、
「ipodでJ-POPを聞く」
という、日本に戻った時の感覚であった。同じアジア人、東京と似た感覚であるが、気温や表情など、違うことは間違いない。そこでJ-POPであった。
Everybody JAY’ED ・・これは名曲です。
また、街でよく見かけたのが、「Fine」
「あれやったらだめ。これもだめ。やったら罰金ね」
というものである。ルールというものは罰則とセットで初めて成り立つと思うので違和感は無い。聞けば、「ムチ打ち刑」なるものもあるという。最近のNEWSWEEKに、抑圧的国家の代表例としてシンガポールが載っていたが、同時に商売のし易さもあるという記事だったかと思う。
「新しい国、複数人種ゆえに、統一ルールを国が作り、歴史が浅く、未成熟な部分をカバーしている。」
と後述の福田さんはおっしゃっていた。確かにWikipediaでシンガポールを見ると、どこか怖さも感じる。さて、今回の訪問で思ったこととして、
2.ソフトの街
という2つだ。シンガポーリアンの70%は中国系の人間である。確かに、ビンタン島でのアメリカ人のイントネーション・発音とははるかに違う。でも、彼らは英語を公用語の1つにしている。アジアと欧米の良いところを、その「商売感覚で」したたかに吸収し、表現している。マーラインオンの向こうに3本の棟が建設中で、カジノにする予定だという。
以前、建築家(むしろ思想家も)の安藤忠雄さんの講演会に出たときに、
「大阪を活性するために、天保山の海などにイルカを放流したらいい。でも、役人が、 「オリ破って逃げたらどないすんねん!川上ったらどないすんねん。」と反対された。これだから役人はアカン。」
というようなことを言っていた。たしかタマちゃんが話題になったあとだったと思う。また、大学の講義で、「一匹の蟻」を見たときに
イギリス人は、どのようにできているか
中国人は、どのようにしたら食べれるか
と、考えるというジョークをを覚えている(他の国もあったと思うが忘れてしまった)。シンガポールでは役人も含め、国全体が
「それおもろいやん、無駄ないやん、カネになるやん」
という感覚で動いているように思える。国のアイコンの向かいにカジノが堂々と発つ。日本にもカジノや風俗はたくさんある。グレーを許容するのが、日本人のよいところなのだが、シンガポールはゼロイチ思考が似合っている。ゼロイチというのはつまり、デジタルの世界だ。デジタルの最大の利点は、
「複製の限界費用がほぼ、ゼロ」
ということである。コピー、ペーストで済む。シンガポールには、確かな第1次産業は無い。つまり、サービス(ソフト)的要素がカネを稼ぐ大きなエンジンである。一次は無い。資源も無い。自分たちでそれを知っているから、徹底的に
「シンガポールは常に外を見ている by 福田さん」
シンガポールでは、顧問弁護士に紹介してもらい人材紹介業を営む、福田さんに2時間ほど話しをうかがうことができた。いくつか引用する。
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シンガポールも格差はある。でも、日本ではホームレスがいる。シンガポールではいない。なぜか。住居が無いと仕事ができない、ということが無いからだ。ビザも簡単にでるし、働きたい人を受け入れる国である。会社名より、個人名が重要だ。
シンガポールでは共働きが多い。女性が家にこもっていると「具合でも悪いのか?」と言われる。子供がいる家は、S$400くらいで住み込みのメイドさんを雇う。
ビジネスのプラットフォームが国によって整備されている。ほとんどがオンラインで申請は完了する。ビジネス感覚はさっぱりしていて、商売も数字的な話しが多く、「Just for Information」という感じ。
この国には四季が無い。飽きる国にいて、いかに飽きないように生きるかというチャレンジはある。
医学面など、外国から学者を積極的に招聘している。
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ソフトウェアの国においては、徹底的な割り切りがされる。ムダなコードは必要ないのだ。必要なモジュールは国外から買えばいい。
たとえばパソコンで、同じスペックのモノを作ろうとしたら、現在、1年前、10年前、未来ではるかにコストは違う。シンガポールは歴史が無い分、たとえ抑圧的だったとしても現在のコストでルールをイチから作ることができる。
この地ではトヨタ、カローラが400〜500万円ほどするらしい。日本の3倍以上か。それでもバンバン走っている。また、言葉を思いだした。
力のある者は、頭のいい者に・・・
頭のいい者は、金のある者に・・・
金のある者は、ユメのある者に・・・
そういう国だ、と思った。
空港近くの屋台・・S$30でビールもおいしいものもたらふく食べれる。
300万円以上する車に乗って皆が食べにくる。
また福田さんの話の中で、一番印象に残ったのが、
「あることに気づいてしまう、知ってしまうということも、その人にとっての運命」
というフレーズであった。
今回の私の旅で、ベトナム・シンガポールを知った。現地で知り合った人、文化に触れたことは本当に有意義な旅であった。
ぜひ、人生の「STOPOVER」として一度、ベトナム、シンガポールに行ってみることをオススメする。物価も高いし、オーチャードロードなど、ブランド天国、消費者天国のような国だが、熱帯の気候の中、閉そく感はこの国には無い。また、ベトナムのような懐かしさも無い。過去は無い。全ては未来のために。
■今回シンガポールで利用したホテル
ノボテル クラークキー(旧ホテルオータニ)
直接公式サイトで予約をしました。予約変更不可プランで、一泊13,000円程度(税金込)。クラークキーに近くアクセスはよいですが、いくつか不満でした。次に行くかと言えば、行かないです。同値段帯で楽天トラベルなどでも気軽に予約ができるようですね。
■海外旅行に持っていくとよいもの
・コンセント変換アダプタ(2個)
・ポータブルスピーカー
・ボールペン、メモ帳
・ipod(USBメモリ)
・ホテル内ジムでの運動用ポロシャツ、靴