先日出た経営者セミナーで、
「エゴを持って従業員と接していないか」
という内容があった。身につまされる内容である部分もあった。
その会では、エゴ=自己ギマン と考えていた。
エゴ=利己主義だと思う。反語は、「利他主義」だ。
さて最近、出向と言う名で、当社社員を借りたいと言う案件がいくつか入ってきた。我々のビジネスモデルは顧客先に、派遣か受託で常駐して業務をすることが多い。しかし最近、二重派遣や偽装請負回避のために、「出向」がクローズアップされてきている。
出向には転籍出向と在籍出向の2種類がある。在籍の場合は、出向先、出向元と雇用契約をすることになるなど、雇用契約は複雑になり、就業規則や各種保険なども出向先のものが適用される。今まで自分たちで時間をかけて、社内で四半期評価や教育などを行っているのに、それも関係はなくなる。しかしひょっとしたら、出向先のほうが恵まれている環境であることもあるかもしれない。
さて、今回の決断であるが、大阪ではない地域の案件であった。正直言って、売上・利益は上げたいから行かせたい気持ちはある。しかし、
「出向で、・・に行ってくれ」
と社員には言えなかった。今までも断ってきたし、他社員の手前もある。派遣ですら、指揮命令を派遣先に委ねているのに出向など。期間が半年、など限定されていれば考えようもあったかもしれない。
グループ企業や、会社全体で信頼が交わされている同士での出向はわかる。新しい者を採用するより、グループ間でスキルの共有、仕事の調整をした方が効率がよい。理由がある。
大手メーカーでは、派遣契約から直接労働契約に切り替える動きもある。
本来は直接雇用されるのが自然であるのだ。
解雇が難しいから、それを回避する雇用策が練られる。そこにグレーゾーンが発生する。
もし、出向させてまで人員が欲しいのなら、営業支援費などの名目で、その分の利益を最初に出向先は出向元に請求し、顧客を紹介したほうがスッキリするのではないのか。が、商慣習上そうはいかないのだろう。中抜き大国、日本。生産性が悪い。
私は、
「二重派遣、偽装請負はNGだから出向で。」
などと言う安易な発想は止めたい。もし、出向元に退職金制度や有給休暇などの労働債権が残ったまま出向させられるとしたら、その調整にも工数が必要だし、働く者はどう思うか。下手をすれば労働者供給になりかねない出向は、使用者のエゴではないのか。
利他主義とまではいかないまでも、越えてはいけない一線が、そこにはある気はする。